自分自身を否定しきって自傷行為がやまないADHDの少年が、キャリアチェンジ犬を家族に迎えたことによって徐々に落ち着いていき、夢かと思われた高校進学まで成し遂げた、という話を「坂上どうぶつ王国」でやっていました。
キャリアチェンジ犬というのは、介助犬の訓練を受けてたけど適正がなく、その道を降りた犬のことだそう。
キャリアチェンジ犬を迎えたことで何が変わったか、迎える前は自分や世界をどう感じていたかなどを、少年が自分の言葉で語ってくれるシーンがあって、エピソードのひとつにハッとしたものがありました。
「どうしてオズ(彼が迎えたキャリアチェンジ犬)には心を開くことができたのか」
という意味合いの、インタビュアーからの問いに対して、
彼は答えて曰く。
「今まで、周りの人たちは誰もが自分の悪口を言ってるだろうと思ってた。
でも、オズは犬だから、悪口を言うはずがないって思った」
映像の中のオズは少年の顔をなめまくり、甘えまくり、一緒に走りまくっていました。
オズが人間だったら、
「こんな仲良い風にしてるけど、僕がいないところでは僕の悪口言ってるんだろ?」
っていう思いが、どうしても生まれてしまうんだろう。
でもオズは犬だから、人間の言葉を話さないから、悪口の言いようがない。
疑わなくていいことで、余裕が持てる心の部屋がひとつできたのでしょう。
もうこれって、お医者さんとかカウンセラーとか、人間がどうにかできる問題じゃないじゃないですか。
オズが人間の言葉を話さない=人間じゃないから、少年はひとつ救われた。
人間がいて、犬がいて、猫がいて、鳥がいて、トカゲがいて、
空があって、海があって、電柱があって、ビルがあって、
それぞれの種族の中でも個体差が無数にあって、
みんなが違ってるから、言葉も考え方も生き方も違うから
だから傷つけ合うけど、
だから補い合えるんだきっと。
人と違うことで悩んだり、それで責められたりするけど、
人と違うことこそ客観視して、認めて、じっくり育てていけば
自分のため。
ひいては他人のためになるんじゃないかと思ったのでした。
番組のつくりで気に入らなかったことも書きます。笑
少年を「人になじめない、社会になじめい人」
オズを「介助犬になれなかったおちこぼれ」
みたいな対比表現をしていたこと。
そのふたりが出会ったことで奇跡が起きた!
というわかりやすい見せ方にしたいのはわかるけど、
少年は「人になじめない」んじゃなくて「生き方への糸口が見つかってなかった」人だし、
オズは「おちこぼれ」じゃなくて「特性に合った道へ進んだ」犬だし、
要所要所で雑に要約したキャッチの言葉が出るたびに、
実際の内容と剥離してんなと思ってしまいました。
とはいえ、すっごく心に残ったプログラムでした。
少年が自分の言葉で、過去も現在もいろいろ語ってくれたの、とっても良かったなあ。
かえで
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